R32スカイラインってすごいよな。デビューからもう16年も経っているっつーのに、いまだ人気車種だ。とくにビギナー、ミドルクラスではまるで減るようすがない。永遠の定番車種なんだね。そんないまだからこそ、今回はちょっと特別な仕様を集めてみました! 標準エンジンをポイして、さらなるポテンシャルアップをもくろんだ3台の登場です! |
SR20DET仕様 飯塚SKYLINE(HCR32) | |||
スカイライン歴10年、5台乗りついだ結論がここにある!
飯塚治城と言えば、ドシャコタンのスカイラインで、たびたびドリ天にも登場した栃木を代表するエキスパート。数年まえにはD1GPにも参戦していた。それからしばらくドリフトから離れ、満を持していままでのスカイライン人生の集大成として製作したのがこのHCR32だ。「かなり気合い入ってますよ!」と自信マンマンで言うとおり、メイキングのコンセプトはズバリ“クイック&ハイレスポンス”で、エンジン以外にも見どころ満載だ。 スピードや角度を追求するのは当たりまえとして、飯塚くんがマトを絞ったのは、最大角度までの到達時間を短縮すること。そのために必要だったのが、フロント軽量化のためのSRエンジン、そしてカンペキなるボディ剛性だったってワケ。 去年の秋に日光サーキットでシェイクダウンをしたんだけど、そのときのことを「あまりのイメージとのかけ離れ具合にビビりました。オレってこんなにヘタだったっけ?って思うほど乗れなかった」と振り返る飯塚くん。クルマの動きが速すぎて、それに対処しきれなかったんだな。しかもその後NOSを導入。これはフレンズの猪瀬くんの「タービンを大きくして高回転寄りにするよりも、NOSで下から使えるようにしたほうが、中低速コーナーでの振り返しスピードが絶対に速い」とのアドバイスで。その言葉どおり、2800回転から全噴射するように設定されたNOSは、1コーナーに進入したあとの踏み返しや振り返しで段ちがいのスピードを実現した。 ボディは33点式のロールバーとフルスポット増しでガッチガチ。このボディを生かすために足まわりはしなやかだ。以前は究極のシャコタンを実現するためにサードリンクをショート加工していたんだけど、すこし車高を上げたら「スカイランの足ってすごくいい!」ってことに気づき、いまはアライメントをしっかりと取るためにベーシックなアーム類を装着しているだけだ。 「このスカイラインで今年は思いきり攻めますよ!」と気合いを入れる飯塚くん。またひとり手強いオトコがドリフト戦線に帰ってきたぞ。 |
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Vマウントでクーリングは万全!
SRエンジンを搭載したことで、エンジンルームにスペースが大きく確保できたのでVマウントにしている。ラジエターに電動ファンを2基がけにして、ボンネットに大きなダクトを開けたら、真夏でも水温は90度以上あがらなくなった。「これはストレスが少なくて大きなメリットですよ!」と飯塚くん。 |
NOS追加でどこからでも
NOSの噴射タイミングは、は2800回転から9000回転でアクセル開度が90%以上のときに100%噴射するように設定されている。ってことは、アクセルをガバッと開ければいつでもNOSパワーが発揮されるってこと! とくに踏み返したときの加速は、NOSがあるのとないのとではおおちがいなんだって。セッティングはD1マシンでもNOSを使っているフレンズの猪瀬くんにお願いした。ハイパーダッシュ! |
車高調はエンドレスのファンクションX。バネレートはフロント9キロ、リヤ6キロとやわらかめ。車高もかなりあげ、足まわりをしっかりと動かせるようにしたら、スカイラインのサスペンションシステムの素性のよさに気づいたという。アーム類はアライメントをしっかり取るためにイケヤフォーミュラのロールセンター補正機能つきのロアアームは必須とのこと。 | ロールバーは33点式!
ボディは徹底的に軽量化&剛性アップした。担当したのはガレージPBの永塚くん。「ガチガチのボディは乗りにくくなる」と言われもしたが「それを乗りこなせば理想の走りになると思った」とリクエスト。ロールバーはなんと33点式で、フルスポット&ボディパネルは全部溶接で補強してある。スポット増しも強烈! |
右手で指しているところにNOSのオン・オフスイッチがある。これを入れておけばアクセル開度が90%以上の2800回転から9000回転まででNOSが噴射される。ガソリンといっしょに吹くウェットショット方式だ。パワーは約50馬力ほど上乗せされる。ガスは1本1万5000円。 | 場所によって鉄パイプの太さを変え、荷重を分散させるように計算してあるそうだ。パネルの継ぎ目も補強されているのがわかるかな? |
新チーム結成で巻き返すぜ!
湾岸HALKY KNIGHTSレーシングドリフト歴は10年、ずっとR32スカイラインに乗り続けてきた。D1GPにも参戦していたこともあるスーパーエキスパートだったんだけど、ここ2年くらいはドリフトから遠ざかってた。今年はD1GP出場をもくろみ、選考にチャレンジしていく予定だ。ちなみにこのチーム名は、飯塚くんの復活を祝って、彼をリーダーに新たに結成された新チーム。栃木の達人として知られるフレンズ猪瀬、ソフトパンチ永塚、戸ヶ崎、飯田など、そうそうたるメンバーが集まった。飯塚治城 栃木県在住 32才 |
ステアリングラックはPS13用を流用し、ワッシャーをはさんで切れ角アップ。おなじだけワッシャーを入れてもスカイライン純正よりも断然切れ角があがるそうだ。切れ角があがったことでロアアームとスタビライザーが干渉するので、スタビをノーマルにもどし、テンションロッドの取り付け位置をロアアームの上側から下側に変更。 |
加速と振り出しが異様に速い!
外から見てすぐわかるってすごいことでしょ!? 去年のシェイクダウンのときも走りをチェックしていたんだけど、そのときは動きがカクカクしててすごく乗りにくそうだった。飯塚くんが得意とする日光サーキットの1コーナーでスピンしまくってたからね。 今回はまるで別モノ! とくに印象に残ったのは、進入時の向きが変わるスピードだ。角度の大小ではなく、バシッと横向くまでがクイックなんてモンじゃないんだ。そして立ちあがりでスピードが乗るまでも速い速い。コースサイドで見ているひとにそれが伝わるって、よっぽどの戦闘力アップだと思うな。 |
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RB26DETT仕様 矢原SKYLINE(ECR32) | |||
熱対策と駆動系の強化がキモ! 載せ換え自体はカンタン!?
矢原くんがRB26エンジンを搭載しようと思ったキッカケは単純明快。当時乗っていたタービン交換したRB25仕様がGT-Rのブーストアップ仕様に抜かれたから。「けっこうカネかけてましたからね、ヘコみましたよ」と振り返る矢原くん。そうして2年まえにRB26を搭載し、中部のドリコンを総ナメにした。グリーンメタリックのHCR32で期待のニューカマーに掲載されたころだ。このスカイラインは通算5台目。R32スカイラインにRB26を搭載すること自体はもうすでに5、6回目なので「2日もあればできる」ってほど手慣れてる。彼に言わせればRB26化はエンジンメンバーやマウント類をそのまま使え、載せ換え自体はカンタンらしい。 ただエンジンの発熱量がハンパじゃなく、水温がかなり厳しいとのこと。5番、6番シリンダーはとくに弱いらしく、局部的な水温上昇でなんどもピストンが溶けちゃったそう。そこでブロック内に水の通り道をつくり強制冷却。これでエンジンブローは格段に減った。 エンジンだけで100万円以上かかっているけれど「これで600馬力でしょ。RB20はもちろん、SR、RB25でパワーを出すことを考えれば断然安上がりでしょ」と言う。唯一の対抗馬である2JZは「エンジンはサイコーッスよ! でも載せ換えるのがめんどくさい」との理由で敬遠しているそうだ。 600馬力以上発生しているので駆動系への負担もデカイが、GT-Rパーツを使うことでトラブルを軽減している。パワーにこだわるからこそ、抜かりなく対策しているんだな。 ドリフトスタイルについては「キビキビした動きを求めるのはやめました。目指すは1発でバリっとつけた角度をそのままパワーで持っていく走り。角度がつけば、そのぶんスピードが落ちるワケで、そのためにパワーはあればあるだけいい!」と、まえのページで紹介している飯塚くんとはまるで逆。4ドアだってこともあるのかな? 彼の走りを見たら、これはこれでありだと思った。 |
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熱対策はRB26には必須メニュー!
水温が厳しいのは直6エンジンの宿命。とくにバルクヘッドに近い5番、6番シリンダーは熱がたまり、それが原因で何度かブローしたそうだ。この問題はブロック内に水路を設けることで解決。「全体的な水温上昇はしょうがないッスね」と言ってた。ヘッドカバーがないのはプラグがよくカブるからで、カバーについているパワトラはバルクヘッドに固定していたぞ。 |
TD06Hタービンで600馬力を絞り出す!
エンジン本体はノーマル。TD06H-25Gタービンはトルクフルな中間域が気に入りチョイスした。3800回転からビンビンなんだそーだ。高回転での伸びを捨て、低中回転で伸びる仕様、そうRB25っぽい乗り味を追求した結果なんだ。ちなみにBNR32、BCNR33のRB26ならば、15万円から20万円で手に入るのも2JZに手を出さない理由とのこと。 |
自作スペシャルアームは
アッパー、ロアアームとも3センチづつ延長。GT-R純正フェンダーのツメ折りにピッタンコになるように計算した。この方法だと、スペーサーで3センチ外に出すよりも格段にハンドリングがよくなり、フェンダーとの干渉もなくなった。ただしピロになっているワケじゃないので、ヨレは気になるみたい。調整式のピロアームも売っているんだけど、3センチも延長できるものはないそうだ。はバルクヘッドに固定していたぞ。効果バツグン! |
エアロもオリジナル!
ユーラスのフロントバンパー以外は矢原くんがデザイン、製作したオリジナルだ。RT-R純正風のリヤフェンダーとドアパネルがすごくカッコイイ! フロントはBNR34顔変換キットをリリースしているよ。エアロは矢原くんの経営するショップ、アルティマで販売している。気になるひとは 0583-70-3986までどーぞ。 |
カンペキなる駆動系強化で
ミッションはRB25純正で、ドライブシャフト、LSDはBNR32純正。これで駆動系のトラブルから一気に解放された。そしてリヤメンバーはS15から流用。強度もあるし、トラクションのかかりは段ちがいになった。このあたりの強化はハイパワーR32に長く乗ってきたノウハウだね。トラブル知らず! |
このクルマは街乗りからストリートでも使うので、内装はカッパギじゃない。しかも純正シートが本革の稀少モデル!ベース車はRB25DEを搭載したECR32ってグレードなんだけど「皮シートだから買ったようなモンです!」だって! |
今年は800馬力に到達予定!
6年間のドリフト人生をすべて4ドアのR32とともに過ごしてきた生粋のスカイライン乗り。今回紹介したクルマとは別の本チャンマシンを製作中で、そっちはT88-34Dを装着し800馬力を発揮させる予定なんだって!ただ中部地方は大きな大会がなく(みんドリは勝ちすぎて出場禁止になってしまった)、去年から欲求不満がたまっているそうだ。矢原憲仁 岐阜県在住 27才 LIMIT LINE |
白煙モクモク、迫力満点! 600馬力を使ってます!ってかんじだったよ!
期待のニューカマーの撮影のときも思ったんだけど、矢原くんの走りっていい意味で“ムダが多い”んだ。角度をバーンとつけて踏む踏む! 直線では振りまくる! 見てるだけで楽しそうだなぁって伝わってくる。矢原くんにそう伝えたら「それ、サイコーの褒め言葉ッスね!」とニッコニコ。だてにパワー番長を自負してるワケじゃないね。 |
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VQ35DE仕様 トップシークレットSKYLINE(BNR32) | |||
ファンネルの迫力で圧倒!
V35スカイラインのエンジンをR32に載せるだなんて、トップシークレットさんもニクイねぇ。しかもこれ、GT-Rだよ。すごいねー! え、ドリ車じゃないって? そんなこたぁない、このGT-Rはフロントのドラシャを抜いて完全FRなのだ。ウワサによると、ドリフトを視野にいれて足まわりも煮詰めたらしいぞ。ドラシャ抜きの完全FRで全開ドリ可能! VQエンジンを選んだ理由は「いま旬であるVQエンジンのさらなる開発のため」とのこと。GT-Rに載せておけば、全体的に未知数なZ33やV35よりもエンジンに集中できるから、との考えもあったようだ。 ちなみにVQ35DEはV6の3・5リッターで、最新モデルは294馬力も出てる名NAエンジン。トップシークレットのデモカーのZ33やV35はターボ化してるけど、このGT-RはあえてNAで勝負しているのがおもしろいでしょ。 見るだけで圧倒されちゃうエンジンは、ポート&燃焼室加工にニスモのカムを入れたレスポンスアップ仕様。そびえ立つ6連スロットルは“GTスロットル”という名前で近々リリース予定だ。 これでパワーは実測で354馬力。エンジンメンバーにはじまり、VQスワップに関するパーツはほぼワンオフで作られていたけれど、スロットルとおなじようにリリースしていく予定もあるそうだよ。 V6の3・5リッターと聞くとなんだかすごく大きそうだけど、全長はRB26よりも30センチも短くなり、バルクヘッド寄りにエンジンを載っけることができた。さらにエンジンと駆動系を合わせてノーマルから約150キロも軽量化。パワーよりも「ハンドリングとレスポンスで勝負するクルマになった」ってかんじかな。 これだけすごいスペックなのに、エアコン、オーディオ完備で室内もキレイに作られているのが気に入ったぞ。 そうそう、これまで オプションやオプション2でもたくさん取り上げられているクルマだけど、全開走行は今回がはじめてだそうだ。いやぁ光栄ですね〜。オーナー車じゃないから今回の企画にそうかなぁと思っていたけど、ヨーイチくんにお願いしてまで走らせてよかった! |
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作り込みがハンパじゃない
エンジンルームの熱気を吸ってしまうのを防止するため、フロントバンパーの両端から空気を取り込んで、ボンネットの内側に作ったダクトを通ってスロットルにじかに吸い込ませるようになっているのだ。ちなみに「おなじクルマ作ってくれって言ったらいくらでできます?」って聞いてみたら、車両別で300万円くらいだって! スロットルとファンネルのキットは約45万円で発売予定だ。まさに芸術品! |
意外とコンパクトになって
エンジンの全長は30センチ短くなったため、大きいラジエターを装着できるようになり水温対策は万全。電動ファンはFD3S純正だった。走行していても水温は問題なかったんだけど、油温がきつそうだった。全開走行は今回がはじめてだったんで、適宜対処していくとのこと。冷却効果もアップ! |
超キレイな室内に脱帽!
フロントのレカロシートにリヤシート、ダッシュボードは革貼りになってた。6点式のダッシュ貫通ロールゲージが組んであるんだけど、ロールバーパッドにクリーム色の皮を使うことでインテリアの一部のようにしあげていた。もちろんエアコン、オーディオ完備だぜ! メインメーターは最新のデフィのDCCSオールインワンメーター。「洗練されてる」とはまさにこのこと! |
運転席の左側にはデフィメーターのコントロールボックスがあった。もちろんオリジナルで作ったもので、ニーパッドとしての役割りもある。左側のがDCCSのメモリーカードスロットで上が追加メーター、下がVSD(ガラスに映るメーター)のコントローラーだ。赤いボタンはラインロックで、その下のトグルスイッチはカザリだそーです。 |
アーム類はすべてトップシークレット製。FR化してリヤに100%のパワーがかかるようになったため、保険の意味でアームの付け根は溶接補強がされていた。キレイに作りすぎてて見た目にはわからないんだけどね。マフラーは片バンクから1本づつ引いたフルデュアルだ。 | 車高調はトップシークレットチューンのアラゴスタ。バネレートはフロントがノーマルよりも4キロも柔らかい10キロ、リヤが8キロだ。フロントが軽くなったこともあるけれど、ドリフトをして出したセッティングなんだって。切れ角アップもしてあった。積載車への積み降ろしのためにエアで車高が5センチ上下できるロベルタカップを装着。走るときはオフにすれば、なんの影響もないそうだ。 | |||
走行インプレッション
「中低速がないよ」なんて永田社長から聞かされていたんだけど、ぜんぜんそんなことない! そりゃ絶対的なパワーはないけど、全域でキレイにパワーが出るからすごく乗りやすいの。前後RE01Rでもイケイケだったもん。ハッキリ言っていま煮詰めてるZよりもコントロール性がいい! あと少しのパワーとアクセルのツキがよくなれば、D1でもいいとこいけちゃうかも!? オレが乗ればね! 強いて言えば、油温が厳しいのが気になったな。by今村ヨーイチ |
ありえないエキゾースト音に感激!
いやぁ、いいもん見たなー。V型の排気音ってもっと重低音かと思ったら、すっごく澄んでてカン高いの! あと、スパッスパッっと角度が変わるのが印象的。フロントが軽いんだろうか?
「まだセッティングが出てないから」って永田社長は言っていたけれど、とてもそんなことをかんじさせない走りでした。あと、いきなり乗ってキメてくれる今村陽一くんって、やっぱ激ウマ! |
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