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D1グランプリ出場マシンのなかで最重量の記録をもつマシン、それがクニーズ高橋チェイサーだ。なにしろ4ドアセダンで、エアコン、カーナビ&オーディオ付き。快適ストリート仕様そのものがトップ集団で戦っているのだから名指しで応援する熱狂的なファンは多い。驚くべきことに平成10年からずっとこれ1台を乗り続けて、走行距離は17万キロを超えている。けっして特別ではないチューニング内容だけど、ひとりのドリフターがコツコツ積み重ねたノウハウの集大成は、多くのストリートドリフターに希望を与えるはずだ。 | ||
平成10年、くたびれてきたJZX90から、このチェイサーに乗り換えた高橋は、ボディ特性のちがいにとまどった。JZX90は全体的に剛性が高いが、GOAボディになったJZX100は、キャビンが硬いのに、前後が柔らかい。衝突時に衝撃を吸収させるためだ。そのせいで「ボディが3分割で動くようなフィーリング」と悩む。ハンドルを入れてもワンテンポ遅れてから曲がるような感覚だったという。しばらくは、その状態でごまかしながら乗っていたが、D1初年度から2年間はノーポイント。追走トーナメントに進出することもなかった。それに、当時はひとりよがり的にスピードばかり追求していたのも原因だった。「リミットラインを狙っていきます!」などと言っては、あっさりそのリミットラインを越え、大きくクラッシュしたりしたこともあった('01年第4戦)。しかし、2003年ころから、ドゥーラックのフロアサポートバーなどを装着して、ボディ剛性を引き上げていくと、しだいに反応はよくなり、思い通りに動かせるようになってきた。走らせかたに関しても、2003年からは、審査基準を考慮して、振りを大きくし、角度をつける走りを採り入れていった。そのスタイル変更も功を奏し、2003年には最高で3位に入る活躍を見せ、2004年のプレシーズンマッチにはなんと優勝もしてしまった。しかし「公式戦じゃなかったから、ポイントも賞金もない。もらったのはプレッシャーだけ」と高橋は冷静に語る。その大会の話題が出ると、彼はいつもそう答えている。実際、その後の2004シーズンは、エキシビジョンマッチでベスト16に残るが、第6戦まで5戦連続予選不通過という散々な内容だった。さらに悪いことに、高橋はプレシーズンマッチで勝ったというプレッシャーもあり、走りのスタイルやマシンづくりを、またしても、むやみに速さを追求する方向性に振ってしまった。リヤのトーをインに10mmもつけてみたり、リヤメンバーの取り付け部に10mmのスペーサーを2枚も挟むなどしてメンバーを傾けて装着し、セッティングはとにかくトラクション重視。結果的に、前には進むもののテールが出にくく、角度をつけるとスピンしやすいという扱いにくいマシンになっていたのだ。 |
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高橋がドリ車作りでテーマにしてきたのが、ストリート仕様。ナンバー付きは当然として、ナビもオーディオもエアコンも装着したままD1で勝つことを狙ってきた。これは過激になりつづけるほかのD1マシンに対するアンチテーゼでもあり、ストリート出身のプライドでもある。しかし2004年の不調の際には「なにかしらの結果を残さないとスポンサーに顔向けができない」という焦りから、リヤシートを外し、フロント以外のウインドウ類をアクリルに交換し、リヤのドアをFRPにするなどの軽量化に踏み切った(リヤウインドウにはTVやGPSのアンテナが入っていたのでTVもカーナビも使えなくなってしまった)。それでも、まだ結果は出せなかった。しかし、復調の手がかりは夏くらいから掴んでいた。練習走行で時田といっしょに走ったとき、彼のソアラは思った以上に遅かったのだ。しかし、この年、時田は何度も予選を突破していた。そこで高橋は「スピードじゃなくて、扱いやすさなのかな」と思いはじめたという。クルマが大きく変わったのは、最終戦の前だ。日光サーキットに練習に行った際に、圭オフィスの北澤源吾さんに「オメエのクルマ、乗りにくそうだな」と言われ、それまでの悩みを相談すると、アドバイスをしてくれた。北沢氏の助言で方向性は180度変わることになる。リヤメンバーを傾けて取り付けていたのは、夏ごろに戻していたが、それまで明らかに前下がりにしていた車高は、やや後ろ下がりに変更。リヤのバネレートは16キロから9キロに、リヤのトーインは4〜6ミリに調整した。さらに前荷重がかかりすぎないように、フロントの車高調にはバンプラバーを入れた。リヤ荷重にして、角度をつけても耐えられる足まわりにしたのだ。これが大成功。ケツを出そうと思えば出しやすく、流れるのを止めたいと思えば、それなりに止まってくれるという足になったのだ。フロント荷重は減ったが、ダブルウィッシュボーンということもあって、意外と接地感は損なわれなかったという。走りかたも変えた。角度を小さめにしてスピードを稼ごうとするのではなく、振りを大きくして、4ドアセダンならではの迫力をアピールした。最終戦で高橋は、久しぶりに追走トーナメントに進出し、9位に入ってポイントを獲得した。その後も、好調は持続し、今年に入っても、第1戦、第2戦と追走トーナメントに進出している。いまや高橋は、縦のスピードではなく、横方向のスピード、つまり振りの大きさや鋭さを見せることが、チェイサーに最適な走りかただという手応えを持っている。そして現在。高橋チェイサーは2号機を製作中で、今シーズン中にはシェイクダウンしたいという。こんどのマシンはとうとうサーキット専用マシンになってしまう予定だ。だからこそ、それまでにもういちど、このストリート仕様の重量マシンが上位入賞するところを見せてほしいと思うのである。 |
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エンジン本体はノーマル。カム交換さえしないのは、「パワーアップにそれほど魅力をかんじないし、そのオカネを使うなら、エンジンをもう1基買う」との考えから。パワーを上げると、タイヤとのバランスが崩れて、ホイールスピンしやすくなってしまうことも心配だという。ドゥーラックは、けっして壊れないコンピューターセッティングをしてくれるということで、過去に圧縮が下がってエンジン交換したことはあるが、ブロー経験はない。なお、エンジン交換をした際に、エンジンルーム内にスポット増しを施している |
ずっとアクチュエータータイプのタービンを使っていたが、昨年の最終戦で、はじめてウェストゲート仕様のタービンにした。筑波の1コーナーからS字までの区間で早めに3速に入るようになって、楽になったという。また、エアフロを残した制御だと、ときどきコンピューターがバグって不調をきたすことがあったため、エアフロレスにしてFコンVプロで制御している。サクションパイプはこだわりの100φだ。 |
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OPTIONパワーマーケットで1000円で購入したオイルクーラーをフロントグリルの部分に装着し、パワステオイルクーラーとして使用している。このおかげでパワステオイルが噴かなくなった。 |
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フロントフェンダー内部の後ろ側には、オクヤマで入れてもらったワンオフの補強バーが入っている。レインガーターをバルクヘッドから支えるための工夫だ。これによって、前荷重をかけやすくなったという。ブレーキはパッドもノーマル。「チョン、チョン」という程度しかかけないからだそうだ。フロントのキャンバーは、フルカウンター多用時のタイヤの減りかたを見て2度半に設定。トーは、スピンのしにくさや回頭性などのバランスから、ゼロに設定している。切れ角アップはJICのタイロッドにて。 |
アーム類は風間オートの調整式。前方向に引っ張ることでホイールベースを短縮し、動きを機敏にすることが一番の目的だ。リヤには自由長250mmという長めのスプリングを装着して、サスペンションが伸びたときの接地性を高めている。キャンバーは、タイヤの接地性を考慮した結果、約2度だ。リヤのメンバーは、ハードに走っていると割れやすいので、部分的に当て板をして補強をしている。メンバーを支えているフロアパネルも溶接がはがれてしまったことがあるので、修理ついでに補強している。 |
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センターコンソールにはカーナビをビルトイン。エアコンのコントロールパネルは肘かけの中に移設し、ETCはグローブボックスの中に装着している。エビスサーキットに行く途中に、眠くなったら寝られるようにと、かつてはセミバケットシートを使っていたが、昨年秋に、軽量化のためにフルバケに交換。いまさら「身体が固定されて、ドリフトしやすくなったよ」と実感している。 |
以前はオクヤマの、ピラーに沿わせるタイプのロールケージを装着していたが、現在は写真のようなジャングルジム状態。フロントもダッシュ貫通タイプになっている。しかし、そのおかげで足がよく動くようになったのか、横を向けたときに以前より止まるようになったという。ボディとの接合は溶接止めではなくボルト止めだ。 |
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トランクルームのフロアに貼られた数々のチームステッカーが、高橋のドリフト歴を物語る。左奥に取り付けられたプラスチックの容器は、デフオイルのキャッチタンク。これがないと、上側のブリーダーからオイルが漏れて、デフキャリアが油だらけになってしまうそうだ。 |
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前後バンパー、ボンネット、フロントフェンダー、サイドステップはクニーズ製。フロントバンパーの下側には、アンダーパネルを装着して、整流効果を高めている。リヤウイングもドゥーラック製だ。昨年最終戦ではローマウントからハイマウントに変更したが、その一番の理由は「ローマウントに飽きたから」だそうだ。フェンダーは片側約15mm広がっている。 |
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取材協力:Kunny’z 045-317-6967 http://www.kunnyz.net/ | ○ このページの先頭へ |